Research Interest
理論による新物質と量子物性のデザイン
当研究室では、現実物質に即した数値計算手法である第一原理計算を用いて、新奇物質とその物性の開拓を行う。特に電子のバンド構造における幾何学的性質に着目し、非自明な物性を発現するトポロジカル物質の探索に焦点を当て、その特異な電子状態の生む物性や応用を検討する。電子系としては超伝導状態なども対象とし、量子計算を見据えたマヨラナフェルミオンの創発を提案する。また、相関効果を第一原理的に取り扱う手法を開発し、強相関電子系や磁性材料系を含めた幅広い電子系の物質デザインを行う。当ユニットではさらに、電子化物などの化学・材料分野の物質も対象に含め、広い科学領域に跨る材料設計を行う。
トポロジカル系
- トポロジカル電子相 - トポロジカル超伝導相 - トポロジカル物質とその応用 |
強相関電子系
- 超伝導 - 超格子 |
第一原理計算
- GW法 - 低エネルギー有効模型の導出 |
物質科学
- 電子化物 - 分子結晶 - 触媒 |
1. トポロジカル物質の新たな舞台としての電子化物
当研究室では、トポロジカル物質の新たな物質系の1つとして電子化物を提案した。電子化物とは、結晶中の空隙に電子e–が入り込み、アニオンとして構造の安定化を担っている物質群で、小さな仕事関数を持つことから触媒等の分野で研究が進んでいる。例えば、層状物質Sc2C (図(a))では、層と層の間の空隙に電子が入り込み、図(b)のようにバンド絶縁性を示す。この[Sc2C]2+2e–の電荷密度はアニオン電子2e–のためにSc2C層から大きくずれた層間の位置に広がっており、量子化された巨大な分極を有する幾何学的に非自明な系となっている。バルクのトポロジーを反映し、Sc2C表面では幾何学的に保護された金属状態が出現する(図(c))。表面の金属状態は空隙起源のため、Sc2C表面の上に宙に浮かんで出現する(図(d))。この原子に局在していない電子雲は小さな仕事関数を持つため、Sc2Cを基板として用いることで、表面載せた物質に対して高密度の電子ドーピングを行うことが可能になる。例えばMoS2に対してはMo 1サイトあたり1電子のドープが可能となる(図(e))。相対論的な量子相を含め、当ユニットでは様々なトポロジカル電子化物を発見しており、科学分野を横断したトポロジカル物性の開拓が期待される。
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2. トポロジカルノーダルライン半金属と巨大ラシュバ分裂
3. 強相関電子系の物質設計